!!!特殊構造を用いた共役系分子・高分子の開発 !!アザフェナレンを含む共役系・共役系高分子の構築 π共役系へのヘテロ元素の導入は、構造や物性を劇的に変化させる手法として有効である。窒素原子は有機分子にありふれた元素ではあるが、その電気陰性度が物性に与える影響は大きい。{{br}}  ペンタアザフェナレン(図1, 5AP)はフェナレニルアニオン(図1, PA)という不安定な化学種と等電子的なπ共役系を持つが、窒素原子の効果によって高い安定性を有する。我々は、特異な電子状態を持つ5APをπ共役系へ導入することで、新たな電子材料・磁性材料となりうる共役系分子・高分子の構築を目指している。{{br}}  これまでに、共役系高分子中で5APのHOMOのみが共役系に参加することが明らかとなっている(図2, 文献1)。これは、HOMO・LUMOの両方で電子が非局在化する通常の共役系高分子とは全く異なる挙動である。また、5APは蛍光をほとんど示さない分子であるが、これにアミノ基を導入するとπ共役系の対称性が変わり、蛍光を示すようになる(図3, 文献2)。すなわち、π共役系の対称性に着目した簡単な修飾によって分子の光学特性を大きく変えることが出来た。{{br}} 文献:{{br}} 1) Watanabe, H.; Hirose, M.; Tanaka, K.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Polym. Chem.'' '''2016''', ''7'', 3674-3680. (DOI:[10.1039/C6PY00685J|http://dx.doi.org/10.1039/C6PY00685J]) '''[Back cover]'''{{br}} 2) Watanabe, H.; Hirose, M.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Chem. Commun.'' '''2017''', ''53'', 5036-5039. (DOI:[10.1039/C7CC01287J|https://dx.doi.org/10.1039/C7CC01287J]) {{br}} {{img Labweb_5AP_sm.png, style="float:center;!important"}} !!アゾメチンホウ素錯体を用いた機能性材料の創成 アゾメチン(-C=N-)構造は、簡便な操作で合成可能であることに加えて、優れた吸収特性、熱安定性を示すことからπ共役系を構築する有効な手段として用いられてきた。一方、アゾメチン/イミン化合物は、光異性化等により発光特性を示した例はほとんど報告されていない。本研究では、このアゾメチン構造をホウ素原子によって縮環させることで電子的、立体的に修飾を加え、発光材料として応用することを目的とした。図1のような縮環型アゾメチンホウ素錯体を合成したところ、溶液状態では発光を示さず、結晶状態において強い発光を示す、結晶誘起型発光(CIE)特性を発現することがわかった。さらに、結晶状態において加熱や冷却といった熱的刺激を与えると、結晶相転移に伴って結晶のジャンプや分裂といった激しい機械的運動を引き起こす、サーモサリエント効果と呼ばれる現象が発現することを見出した(図2)。この現象により、結晶相転移といった分子レベルでのわずかな変化を、結晶のジャンプといったマクロな現象として捉えることができる。{{br}} 文献: Ohtani, S.; Gon, M.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Chem. Eur. J.'' '''2017''', ''23'', 11827-11833. '''[Back Cover]'''{{br}} {{img アゾメチン.png, style="float:center;!important"}} !!カルド構造を含むπ共役系の構築 カルド構造とは、環内部の炭素原子に二つの芳香環が結合した骨格構造を指す。代表的なカルド構造としては、フルオレンの9位に二つの芳香環が結合したものが挙げられる(図1)。この構造ではフルオレンに対して各々のフェニル基が立体的に存在するため、固体状態でもフルオレン同士が凝集状態をとりにくく、濃度消光を抑制することができる。我々はこれらのことから、カルド構造を介して色素を配置していくことで、凝集状態に生じる非特異的な相互作用による消光を抑制し、分子設計に従った光学機能を有する構造体の創出が可能ではないかと考えた。{{br}}  カルド構造を介した共役系の伸長に関する知見収集を目的として、カルド部位に電子求引・供与基を導入し、置換基効果について研究を行った。その結果、カルド構造を用いることで主鎖と側鎖の電子的相関を完全に遮断することができることが分かった(図2、文献1)。{{br}}  以上の結果から、カルド部位に発光団を導入することで色素本来の発光を主鎖から独立に取り出せると考えられる。ここで、ポリフルオレンのカルド部位にBODIPY色素を発光団として導入することを考えた。その結果、BODIPY色素に対して、ポリフルオレンがエネルギー捕集効果を示し、高輝度発光材料を得ることに成功した(図3、文献2)。{{br}}  このようにカルド構造を利用することで、高分子主鎖およびカルド部位の機能性を巧みに設計することが可能となり、多種多様な発光材料が得られることを明らかにした(文献3, 4) 。{{br}} 文献:{{br}} 1)Yeo, H.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.'' '''2012''', ''50'', 4433-4442.{{br}} 2)Yeo, H.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Macromolecules'' '''2013''', ''46'', 2599-2605.{{br}} 3)Yeo, H.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Polymer'' '''2015''', ''60'', 228-233.{{br}} 4)Yeo, H.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Macromolecules'' '''2016''', ''49'', 8899-8904.{{br}} {{img カルドフルオレン.png, style="float:center;!important"}}