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芽はぐくむ研究室

2007年4月16日(月)付 日刊工業新聞より引用

新しい機能を持つポリマーの開発を目指して研究を進めているのが、京都大学大学院工学研究科の中條善樹教授。有機分子と無機分子、お互いの特性を生かし分子レベルでハイブリッド化させる。「ハイブリッド化することで、今まで考えていなかった、おもしろい特性をもった材料ができるかもしれない」(中條教授)という。ハイブリッド化したポリマーは電子的機能や光学的機能など、さまざまな新しい機能を発揮することが期待できるため、学問的にも工業的にも注目を集めている分野だ。

中條善樹教授らは「ハイブリッドポリマー」と「ポリマーハイブリッド」という言葉を使い分けている。材料としてハイブリッド化されたポリマーと、元素レベルでポリマーとハイブリッド化したものの違いだ。

主な研究の一つとして、主鎖にホウ素を含む共役系ポリマーの合成に成功している。このポリマーは紫外線を照射すると発光する特性を示すため、光学材料への応用が期待できる。青のほか、緑や紫、黄、白とカラーのバリエーションも増やした。「実際につくったものを目で見ることができたら楽しいと思う」。(中條教授)

普段よく見るポリマーは炭素を主鎖とし、水素や酸素、窒素などを含んでいるが、「周期表を見ると、まだまだ活用されていない元素がたくさんある」(同)という。こうした多くの元素をうまく活用することで、ポリマーを構成する元素の幅が広がり、新しい特性を示す材料への応用に道が開けそうだ。

このほか、金属ナノ粒子の表面を修飾することで、ナノ粒子の集合体をコントロールする技術も開発している。同技術は医療分野への応用が期待できる。

ハイブリッド化した金属粒子の具体的活用法として、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)への応用が期待されている。がん細胞は通常の細胞に比べ、酸素濃度や水素イオン濃度(pH)が低いことが知られており、その特徴に応答するように金属ナノ粒子を修飾することで活用できると考えられる。

ハイブリッド材料は電子材料や光学材料など、さまざまな分野で注目されている。ただ、単純に有機分子と無機分子を混ぜると、分離したり効果が半減してしまう。双方の特性を生かしてうまく組み合わせることで、1+1=2ではなく、3や4、それ以上の機能発揮が期待できるわけだ。

中條教授は「発想もハイブリッド化すべきだ」という。そうすることで、普段使っている材料が、新材料として生まれかわる可能性もあるだろう。

(大阪・原田千鶴)(日刊工業新聞)