ジケトンホウ素錯体は溶液状態で強い発光を示す蛍光物質として有機EL材料や生体プローブとしての利用がなされています。 当研究室ではジケトンホウ素錯体の酸素原子を窒素原子に置き換えていくことで、それぞれの分子の構造や電子状態を反映した様々な魅力的な物性が発現することを見出しました。(図) {{ref_image BoronComplexes.png}} 図. 四配位ホウ素錯体分子の構造と主な特性 !!ケトイミンホウ素錯体 ジケトンホウ素錯体の窒素原子の一つを酸素原子に置き換えた化合物をケトイミンホウ素錯体と呼びます。このケトイミンホウ素錯体は溶液状態では発光を示しませんが、凝集状態や固体状態となることで強い発光をするようになります。この特殊な特性を凝集誘起型発光特性といい、これまでに成し得なかった固体やフィルムに状態での高効率の発光が可能になり、有機ELディスプレイなどの更なる高性能化が期待できます。(文献1) {{ref_image AIE1.png}} 図1. 凝集誘起型発光特性とその原理 実際にケトイミンホウ素錯体を主鎖中に含む高分子は、共役系を拡張させつつ、フィルム状態で高い量子収率を示すようになりました。(文献2) {{ref_image ketoiminates1.png}} 図2. ケトイミンホウ素錯体を主鎖に有する共役系高分子 またケトイミンホウ素錯体は後述のジイミンホウ素錯体と比べ高い平面性を持っています。これを利用した擦るといった機械的刺激に対して発光色が変化するメカノクロミズム特性を持った分子(文献3)や凝集状態をゲルにより制御し発光のON/OFFを切り替えたり、有機溶媒により色を変える(文献4)といった刺激応答性材料の研究も併せて行っています。またそもそものケトイミンホウ素錯体自体の高性能化・高輝度化も実現しました。(文献5) {{ref_image ketoiminates2.png}} 図3. ケトイミンホウ素錯体を用いた刺激応答性材料 {{br}} 文献1. Yoshii, R.; Nagai, A.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Chem. Eur. J.'' '''2013''', ''19'', 4506-4512.{{br}} 文献2. Yoshii, R.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Macromolecules'' '''2014''', ''47'', 2268-2278.{{br}} 文献3. Yoshii, R.; Suenaga, K.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Chem. Eur. J.'' '''2015''', ''21'', 7231-7237.{{br}} 文献4. Suenaga, K.; Yoshii, R.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Macromol. Chem. Phys.'' '''2016,''' ''217'', 414-421.{{br}} 文献5. Suenaga, K.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Eur. J. Org. Chem.'' '''2017''', ''2017'', 5191-5196.{{br}} !!13族元素ジイミン錯体 ジイミンホウ素錯体は、溶液状態・アモルファス状態ではほとんど発光を示さないのに対して、結晶状態では高い効率で発光するという、非常に珍しい結晶化誘起型発光特性を示します。この錯体の発光色は、置換基の導入により自在にコントロールすることができます。 さらにこの錯体を高分子の主鎖骨格に導入することにより、化学的な刺激に応答してその発光色を変化させることのできる、固体発光性共役系高分子フィルムを合成することにも成功しました。(文献1,2、図1,2) {{ref_image JACS_TOC.png}} 図1. 結晶化誘起型発光特性を有するジイミンホウ素錯体 {{ref_image AIE3.png}} 図2. ジイミンホウ素錯体含有共役系高分子を用いた発光性フィルム これだけでなく、ジイミン配位子は別の13族元素であるガリウムとも結晶化誘起型発光を示す錯体を作ります。 この錯体の結晶は、決まったサイズの有機溶媒蒸気を選択的に取り込み、その発光色を変化させるという優れた機能性を有しています。(文献3、図3) {{ref_image Gallium.png}} {{ref_image CoverPicture.png}} 図3. 刺激応答性発光を示すジイミンガリウム錯体 この他にも、力学的刺激に応答して発光色を変化させる錯体や、13族元素の種類を変えることによって電子的特性を制御できる高分子など、様々な機能性分子を合成することに成功しています。(文献4-6) {{br}} {{br}} 文献1. Yoshii, R.; Hirose, A.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Chem. Eur. J.'' '''2014''', ''20'', 8320-8324.{{br}} 文献2. Yoshii, R.; Hirose, A.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''J. Am. Chem. Soc.'' '''2014''', ''136'', 18131-18139.{{br}} 文献3. Ito, S.; Hirose, A.; Yamaguchi, M.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''J. Mater. Chem. C'' '''2016''', ''3'', 5564-5571.{{br}} 文献4. Yamaguchi, M.; Ito, S.; Hirose, A.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''J. Mater. Chem. C'' '''2016''', ''3'', 5314-5319.{{br}} 文献5. Ito, S.; Hirose, A.; Yamaguchi, M.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Polymers'' '''2017''', ''9'', 68-78.{{br}} 文献6. Yamaguchi, M.; Ito, S.; Hirose, A.; Tanaka, K.; Chujo, Y. ''Mater. Chem. Front.'' '''2017''', ''1'', 1573-1579.{{br}}